#01 PROJECT SUMMARY

スマートフォンに代表されるデバイスの多様化や自然環境への配慮などを背景に、近年、紙媒体をデジタル化する動きが増えています。「ごま油の四季」は、竹本油脂様が手掛けられてきた季刊誌。年に4冊が発刊され、30年以上にわたって飲食店問屋に配布されてきた歴史ある冊子です。

今回、このプロジェクトで求められたのは、長年培われてきた膨大な資産をウェブサイトで閲覧できるコンテンツとしてシステム構築すること。時代やライフスタイルの変化に応じて、特に利用の多いスマートフォンでの閲覧に配慮しながら、竹本油脂様にふさわしいオウンドメディアサイトの形を模索しました。

竹本油脂様のごま油は、天ぷら専門店や料亭でプロの料理人たちに選ばれてきたロングセラーブランドです。そのため、冊子もレシピ本やグルメ紹介に特化した内容とは異なり、竹本油脂製のごま油と関連のあるシェフやお店を紹介してきました。このウェブサイトでも、竹本油脂様と顧客のブランドエンゲージメント構築を第一に考えて企画を進めていきました。

#02 PLANNING SUMMARY

オウンドメディアサイトのあり方も様々。
膨大な情報量の受け皿をどう設計していくか

刊行物をウェブサイトで閲覧できるようにする方法には、いくつかの選択肢があります。もっとも簡単な例は、PDFデータをそのまま見られるようにする方法です。ただこれでは、見やすさや操作性などウェブサイト特有の柔軟性を活かしきることができません。

そこで、ペンクが提案したのは3つの考え方です。
A:冊子としての一冊のまとまりをなくし、独立したメディアサイトとする
B:ウェブで閲覧しやすいようにコンテンツを分解しながら、冊子も大切にする
C:ウェブサイトを、冊子をフォローするためのものとする

Aの考え方は、各号の記事を個別の記事コンテンツとして並べる考えです。回遊性は高まる一方、一冊の本としてのまとまりが薄くなるデメリットがありました。Cの考え方は、冊子の誌面デザインをできる限りそのまま活かそうとする考えです。PDFで表示される誌面を、より見やすくするようなイメージです。

様々な条件を考慮し、最適だと考えたのはB考え方です。ウェブサイトへのコンバートは大事だが、歴史を積み上げてきた冊子も大事にしたい。その想いから、一冊としてのまとまりを大切にしながら、ウェブサイトならではの検索性や回遊性を叶えられるプランで進行していきました。

そしてもう一つ、オウンドメディアサイト設計のポイントとなったのが、ターゲットの拡大です。紙の冊子同様、飲食店や問屋、製品を卸している取引先がメインであることには変わりありませんが、アーカイブ化が進むことで一般顧客にも見ていただきやすい環境が整います。BtoB、BtoCを問わず、楽しんでいただけることを大切にしました。

#03 MISSION

見た目のデザインだけでは解決しない。
複雑な情報を見やすくするための整理とは

自社の情報を効率よく発信するオウンドメディアサイトは年々増え続けていますが、どのようなケースであっても、まず取り掛からなければいけないのは、網羅すべき情報を洗い出し、俯瞰して捉えることです。見た目の良さやデザインを優先させてしまうと、見栄えは良くとも結果的に使いにくいものになることは少なくありません。そのため、まずは冊子に掲載されているコンテンツを洗い出すことから始めました。

ここでわかったことは、テキスト情報としてコンテンツを見てみると想像以上に膨大な情報量があるということ。いかに情報をさばき、見やすいページへと仕上げるか、単純な作業ではないことは明らかでした。

#04 PENQ’S SOLUTION1

ライブラリーのような検索性も叶えたい。
縦串と横串の回遊性が、記事の分解と再構築の決め手に

一冊としてのまとまりを大切にしながら、ウェブならではの検索性や回遊性を叶える。そのために導き出したのが、縦串と横串の発想です。縦串とは、コンテンツカテゴリーごとに記事をまとめる考え方。横串とは、関連性のあるコンテンツを回遊しやすくするという考え方。
さらに、それぞれの記事に複数のキーワードがタグ付けされていて、特定のキーワードをクリックすることで、関連したコンテンツリストをまとめて見ることができます。この3つの入り口を設けことがサイトの見やすさを飛躍的に上げました。膨大な情報の中でユーザーが迷子にならないように、サイトマップの構築は、特に時間をかけて慎重に進めました。

#05 PENQ’S SOLUTION2

いつまでも誰でも編集できる、持続的にサイトを運営し続けるためのデザインを求めて

「ごま油の四季」のオウンドメディアサイト設計で、最もアイデアが求められたのは、最終的な記事ページのデザインです。紙の冊子のためのデザインを、どうすればウェブ上で見やすく仕上げることができるだろう。一つひとつの記事ごとに個別のデザインを検討していけば、確かに最適なページが出来上がります。ただ、取り扱う情報量が多いだけに、制作に必要な時間も激増してしまい、スムーズな進行が叶いません。竹本油脂様の負担、ウェブ版「ごま油の四季」のクオリティ、ペンクの作業量の最善のバランスを生み出すために導き出したのが、サイト全体を取りまとめるデザインフォーマットです。

ここには、書体や文字サイズにはじまり、店舗情報やトピックス等の扱いに至るまで、細かなルールが定められています。各記事の魅力を引き立てながら、特集テーマや編集方法が異なる記事も受け止められるフォーマットとなるよう、検証に検証を重ねていきました。

最初のご提案から6ヶ月を経てウェブサイトを公開した後は、週に2度のペースで記事をアップしています。30年以上にわたって受け継がれてきた「ごま油の四季」は、オウンドメディアサイトの構築によって、これからも受け継がれていきます。世代が移り変わり、つぎの担当者へとバトンが引き継がれても、ブランド資産としてどんどん成長していける、その土台づくりに関わることができました。

膨大な冊子コンテンツの情報整理が課題となったプロジェクトでしたが、地道な情報整理、回遊性と検索性を考慮したサイトマップの構築、汎用性の高いデザインフォーマットによって、無事整理することができました。現在は、オウンドメディア化をきっかけに、SNSなどの情報発信も進んでいます。これからは、冊子をウェブサイト化する段階から、ウェブサイトを起点に情報を拡散するステージへ。紙面に収まらない情報や取材メインキング、動画など、ウェブサイトだからこそできるコンテンツの展開も増やしていけるはずです。ペンクとしては、ウェブサイトの解析なども行う等、コミュニケーション戦略を立てるために役立つ情報を提供し、これからもお手伝いをしていきたいと考えています。